日本の伝統文化を守り続ける鳩居堂。老舗として発展し続けてきたのは、初代から受け継いできた慈悲の心にもとづく奉仕精神が支えているのかもしれません。


数多くの社会奉仕に
取り組んできた 4代目の
熊谷直恭

熊谷家の家紋(上)と
家紋を図案化した
鳩居堂の商標(下)

鳩居堂の商品は、
ニーズに 応えながら工夫を
凝らしている

 地下鉄東西線京都市役所前駅から、寺町通りを四条の方向に向かって徒歩5分。京都鳩居堂というお香・文房具・和紙製品などを扱う専門店があります。寛文3年(1663年)、熊谷直実から数えて20代目の子孫、熊谷直心が創業しました。以来350年、現在の鳩居堂11代目の熊谷純三さんまで、その歴史・伝統を脈々と受け継いでいます。
 鳩居堂の商標は、“向い鳩”と呼ばれています。その名のとおり、2羽の鳩が向かい合っています。熊谷家の先祖、熊谷直実は合戦で数多くの手柄を立てました。その軍功に対して源頼朝から贈られたのが、向い鳩を描いた旗印でした。熊谷家では代々、家紋としても用いられているその絵柄を図案化し、鳩居堂初代から350年の長きにわたって、商標として使っているのです。
 鳩居堂の歴代のご主人は、今でいう社会貢献活動を積極的に取り組んできました。鳩居堂4代目の熊谷直恭は大飢饉の時、人々に食料を与えたり、天然痘の予防接種を行う種痘所を開設しました。7代目の熊谷直孝は、寺子屋を組織化した教育塾を設置し、これが全国初の小学校開設の礎となり、明治2年(1869年)、柳池小学校が開設されました。
 こうした活動が認められ、明治10年(1877年)、8代目の熊谷直行の代に、太政大臣の三条実美公から900年来伝承されてきた宮中御用の「合わせ香」の秘方を伝授されました。平安時代の香りは、一子相伝として鳩居堂のみがその調合法を受け継いでいます。



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