初の女性受験者として挑んだ1884年の医術開業試験に合格し、日本の公許女医登録第一号となった荻野吟子。1970年に直木賞作家・渡辺淳一がその生涯を描いた小説『花埋み』を発表し、1998年にはこれを原作とする三田佳子主演の舞台『命燃えて』が大ヒット。荻野吟子という名は一躍、世の脚光を浴びましたが、その石像が旧妻沼町の「道の駅めぬま」にあることはご存知でしょうか。

 1851年、武蔵国幡羅郡俵瀬村(現在の熊谷市俵瀬)に生まれた荻野吟子は江戸時代の国学者・埴保己一、明治〜大正期の大実業家・渋沢栄一と並んで「埼玉ゆかりの三偉人」に名を連ねる、まさに郷土の誇りと呼ぶにふさわしい大人物です。公許女医誕生百年記念祭が開催された1984年には(社)日本女医会が「荻野吟子賞」を制定。そして2001年の吟子生誕150周年祭の際、「道の駅めぬま」や墓所のある東京・雑司ヶ谷などのゆかりの地に、彼女の石像が建立されたのです。

 さらに、埼玉県では女性の地位向上や衛生知識の普及にも貢献した彼女の幅広い活動にちなみ、2006年より「さいたま輝き荻野吟子賞」を制定。毎年、男女共同参画の推進に功績のある個人・団体、事業所を表彰し女性の社会進出と男女の機会均等をいち早く唱えたパイオニア・荻野吟子。熊谷はそんな彼女の生誕地であり、彼女が学んだ寺子屋「行余書院」のあった大龍寺(旧妻沼町)は「荻野吟子の原点」とも言える場所。また、生家のあった俵瀬には彼女に関する貴重な資料を展示した「荻野吟子記念館」が開設されています。是非一度、熊谷が生んだ希代の才女、荻野吟子の足跡をたどってみてください。



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